パワーポイントを使ったプレゼンの落とし穴

こんにちは、ゆーたすです。

前回は、資料作り全般に共通するステップをお話ししました。

その中で、手薄になっていた表現方法のノウハウ・ハウツーの点について、社会人がよく使うパワーポイントを題材に、補足していきたいと思います。

パワーポイントも、新卒まもなくは使わないかもしれませんが、これもコミュニケーションをスムーズにもしますし乱しもします。

このタイミングでもう少し深掘りしてみましょう。

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私の失敗談——時間がかかる割に……

パワーポイント(パワポ)って、作るのに時間が結構かかりますよね。しかも、意外に実りにくい……

ゆーたす
せっかく一度、時間を掛けて言いたいことを書き出して整理したはいいものの、また色々やらなくてはいけないかと思うと気が滅入ってきます……
私も、作って説明したけれどもなかなか上手くいかず、本当にやる気が削がれていた時期がありました。

書きたいことは整理したつもりだけど

前回述べたように、一旦思ったことを文章や箇条書きで書いてみました。

いざパワポに落とし込もうとするのですが、うまくいかない。

一枚のスライドに何をどこまで書かなくてはいけないのか、よくわからない……

作って説明してみたけれど

いざできあがったパワポをもって、説明をしました。しかし、反応はいまいち。

その後、質疑応答に答えたり、ざっくばらんにお話しすると、「そういうことだったのね、なるほど!」と、納得してもらえる。

……パワポじゃないほうがよかったのかな?

パワポにまつわる落とし穴——スライド間ぶつ切り現象

パワーポイントには「1スライド1スライドが断絶しやすい」という大きな特徴があります。

図解が多く、1枚1枚に書いてある内容はある程度量が少ないため、ぱっと見の理解はしやすい一方で、論文や新聞雑誌の記事、あるいは一般的な本などの文章と比べると、「前後の内容を見渡して理解する」「通して読む」傾向は少々薄いのではないかと思います。

表現形態文章パワポ
特徴読み方前からつなげて読む途中途中飛ばして読む
つまみ食いしにくいつまみ食いしやすい
書き方指示語を使って前の事柄を引用する原則、ひたすら前進
繰り返し表現する表現するのは一度きり
発信者の意図の伝わり方範囲狭い
最後まで読み通すこと自体が少ない
広い
1枚1枚は分量も少なく視覚的で読みやすい
精度高い
読み解けたと感じた人どうしの理解は揃いやすい
低い
自分が理解しやすいように理解してしまいやすい
傾向著者の想定通りに伝わりやすいが、影響範囲は狭くなりがち影響範囲は広いが、統一性は劣りやすい

つまり、思いついたことや事実をペタペタ貼り付けて並べて、書いてあることをただ読み上げても、勝手に解釈されて思わぬ誤解につながる可能性が大きいのです。

伝えたつもりで、伝わっていないのです。

しかも、なまじ視覚的には分かりやすいので、記憶には残りやすく、影響が大きくなってしまうこともしばしばあります。

これらは、書き手も同様で、なんとなくペタペタ貼り付けても完成した気になってしまうので、こうしたまずさにも気づきにくい。

このように、パワポは、伝わりやすいけれども、使い方を間違えると取り返しが付きにくくなる、「諸刃の剣」的な性格があると思います。

以下では、こうした特徴を踏まえたよくある失敗パターンを紹介します。

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作り方の問題:ストーリーと主張を構築しないまま作ることによる「オチの見えない紙芝居」

まずは「事実をペタペタ貼り付ける」パターンです。

ある話や事実、データ、セリフがあった場合、それらは前後のつながりや組み合わせ方で意味が変化します。例えば……

  • 最近はECの市場規模が拡大している。
  • 当社のEC売上は全体のうち7割。一方同業他社のEC売上の比率は4割だ。

パワポは、ややもするとこうした事実だけで完成させ、主張もなく、つながりもない(けどなんかできあがっている気がしてしまう)となる危険性をはらんでいます。

上記のことを単に並べると、例えば次のようなパワポになります。


※令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)(経済産業省)

これは、次のように2通りの読み方が出来てしまうのではないでしょうか。(若干無理矢理ですが……)

  • ECの売上が多くを占めるうちの会社は、トレンドに乗って成長を続けられる。安泰だ。
  • 他社はこれからECに力を入れるだろう。伸びしろが大きいから、あっという間にうちの会社は抜かれる。早く手を打つべきだ。

文章であれば、こうしたつながりの違和感や結論の曖昧さには、「音読」する中で自然と気づくはずです。

質疑応答の中で読み手の疑問をぶつけられて、回答するうちに、資料には表現されていない主張が出てきて「なるほど」とされることもしばしばです。

話し方の問題:ブリッジを意識しない話し方による「つながりが見えない紙芝居」

そして「ただ読み上げる」パターンです。

特に慣れないうちは、目の前の原稿を読み上げることで相手に伝えようとします。

しかし、そもそもパワポにはそうしたつながりは文字としては書いてありません。

ですので、ただ読み上げるだけでは、どれだけつながるように作ったパワポも、勝手につなぎ替えられて曲解されてしまう可能性が大です。

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パワポ作りのステップ——伝えたいことを分解してつなげる

伝えたいことを段落分けし、要約・主張化する(メッセージ化)

まずは、伝えたいことをずらずら書いた文章を段落に分解してみましょう。

次に、それぞれの段落で、一番伝えたいことが何か抜き出して、「○○すべき(ではないか)」「○○と考えられる」といった口調に書き換えます。

次第に、自分が本当に言いたいこと、相手に理解してほしいことがクリアになってきます。これを、「メッセージ」と言います。

各スライドに主張を配置し、つなげる(ワンスライド・ワンメッセージ、ストーリー化)

できあがったメッセージを、パワポのスライド1枚1枚に貼り付けます。

内容がスカスカだと思うかもしれませんが、まずはこのルールを守ってスライドを作っていくのが大切です。

こうすることで、たとえつなぎが悪かったとしても、1枚1枚は1つの主張を持っていますので、変に解釈される可能性も下がります。

一つのスライドに複数のメッセージが載っていると、後でつなぎ替えにくくもなります。

先ほどの例を使って、上記2つを実施したものを下記に示します。


パターン① 他社のECの伸びしろは大きいから、あっという間に当社は抜かれる。早く手を打つべきだ


パターン② ECの売上が多くを占めるうちの会社は、トレンドに乗って成長を続けられる。安泰だ
(……自然と順序が逆になりますよね?)


スライド間に接続詞を設定し、関係性を明示する(ディスコースマーカー)

スライド同士の関係性を明確にするために、接続詞を設定します。

接続詞は以下の7タイプに分けられます。まずはどのタイプが当てはまるか、次にどの言葉(接続詞)を使うかを考えましょう。

接続詞の種類概要接続詞の例パワポつなぎで使う頻度(≒使わないと誤解される可能性) ※主観
順接原因・理由から自然と導かれる結論を述べるだから、したがって、よって
逆接前後で異なる・対比された事柄を述べるしかし、ところが、とはいえ
並列複数の事柄を同等に並べるそれから、および、また
添加前で述べた事柄にプラスαするさらに、そのうえ、くわえて
選択前後のうち片方のみを取ることを意味するまたは、あるいは
説明理由や補足、あるいは例示・言い換えを述べて主張を明確にするなぜなら、つまり、たとえば、ただし
転換話題を転換するさて、ところで

実際に説明する時には、その接続詞を読み上げる(ブリッジ)

せっかく設定した接続詞も、相手に伝えなければ意味がありません。

相手を目の前にして本番を迎えたときには、資料には書いていないその接続詞をハッキリと読み上げましょう。


パターン① 他社のECの伸びしろは大きいから、あっという間に当社は抜かれる。早く手を打つべきだ


パターン② ECの売上が多くを占めるうちの会社は、トレンドに乗って成長を続けられる。安泰だ


このときのコツは、「次のスライドに入る前に・今のスライドを説明し終わったら間を開けずに読む」ということです。

そうすると、相手の中で、次に来る内容のイメージが湧きますので、こちらの意図した文脈で理解してくれる確率が高くなります。

慣れないうちは意識することが多いし緊張するしで大変ですが、実践してみましょう。

まとめ——パワポのお作法

はじめに、伝えたい内容を段落に分け、「メッセージ」として「○○すべき」などの主張に落とし込みます。

次に、1メッセージを1スライドに配置します。

そして、スライド間のつながりを考えて順序を組み替えます。

仕上げに、順序通りの流れになるよう接続詞を補い、あたかもそこに書いてあるように読み上げて、ストーリーを伝えます。

実際にはメッセージ作りやストーリー設計が大変ですが、そこを考えないでスライドを作ってしまうと、はじめにお見せした「どうとでもとらえられる紙芝居」が出来てしまうので、気をつけましょう!

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